Just another melancholic director's diary

メンヘラ部長日乗

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メンヘラ部長が大泣きした日

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とある講演会に行ってきました。私自身もたまには演台でしゃべることもあるのですが、今日は聞くほうです。みなさんどなたもご存じの大手チェーン店の経営理念がお題です。

平たくいえばこの失われた四半世紀に中産階級が失われた。それには二重の意味があって、ひとつは地方から都市への移動と雲散霧消。もうひとつは中産階級が2つに割れて先日もゲンダイかどこかで記事になっていたアンダークラスが誕生したこと。その中で、上と下の中産階級の食事が、或いは大戸屋によって賄われ、また或いは日高屋によって賄われるようになった。屋号や客層は異なるけれど、成功を収めているところの1つの特徴として、経営理念が家族主義的なものに回帰していると、まあそこまで身も蓋もないいい方は演者もなさいませんが、僕はそう捉えたわけです。

たとえば、高校生とその家族が引っ越しをする。その女子高校生は外食フード店で受験勉強に励む日々を送る。それがあるときお父様の転勤で引っ越しをする。彼女はふと思う。お世話になった某外食フード店にお礼をしなくては。

「ありがとうございました。これまでこんなことを思ったことはなかったのだけれど」「お引越し先はどちらですか」「xxです」「そちらにも当社の素敵なお店があります。受験、がんばってくださいね」

制服から私服に変えたその女子高生が、合格通知を握りしめて、引っ越す前の店舗に持って向かって走るシーンでフィルムは終えます。

別のフィルムも流されました。別のある外食フード店での話です。スタッフのリーダーが、お客さんのあまりの多さに、つい仕事中にため息をついてしまう。キャストさんへの指示にも、疲れのようなものが出てしまう。21時、シフトを終えて控室に帰ると、テーブルの上にホットミルクと「お先に失礼します」のメッセージと手紙が。

「リーダー、今日はおつかれでしたね。お砂糖入れておきました。甘いもので身も心も休めてくださいね」

リーダーは反省する。

「見られているのは、見てくれているのは、お客様よりも先に、キャストの仲間たちだったのかも知れない」

他にもあったのですがドン引きされる前にこれくらいで控えます。

 

さて、僕が、フィルムを見てその筋書きを書いて、おえーっていうと思いました?

これが、号泣ですよ。演出と音楽が相俟って、思いの外、感動します。

しかし同時に、僕は思った。おれが書くのはこんなに安っぽい話ではない。安っぽい話は誰か他の人に任せよう。そしておれはこの涙をいまこそ活かして営業に出るのだ。

 

講演会の後には懇親会が付きものです。

その演者の方は弊社の未攻略の得意先のトップの方でした。

「感動しました。ぼろ泣きです。まさかこの歳(44)になって泣くとは思いませんでした。お話しの経営理念があってのことと深く感じ入りました。今日中にレポートを仕上げて上司(役員)に報告を命じられています。弊社社長にも話は伝わるかと思います。ご迷惑かと存じます。話をお耳に挟みましたら私の仕業です。以後どうぞお見知りおきを」

懇親会の後、帰りの新幹線口の手前まで(幸運にも車ではなく秘書さんと電車でお見えになっていました)それとなく後を追い、偶然を装って声をかけました。

「○○さん、先ほどのメンヘラ部長です。何というご縁。今日はほんとうにありがとうございました。どうぞお帰りお気をつけて。弊社社長より後ほどレポートお送りします」

深々と頭を下げて新幹線改札から奥に消え行くのを部下と並んでお見送りしました。

 

どんな営業さんでもこれくらいのテクニックはいくらでもあります。

僕がいいたいのは自慢や披露ではありません。

文学には文学にしか出来ない仕事がある。ありきたりのストーリーではない、いまここで生きる人と「差し」で声を掛けたり背を向けたり祈ったりする尊い仕事がある。営業はその高度な演技にすぎない。

しかしそこまでは、さすがに部下には、伝えませんでした。彼は「あのメンヘラさんが講演を聞いてガン泣きしていた」「その後ストーカーをしていた」と明日のランチで仲間と話題にすることでしょう。私は黙々とレポートを書いて、書き終え、こちらのブログ記事にいま向かったところです。

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